東北大学学友会書道部

書道のコラムです。


書道コラム


 

側筆と古典

側筆というのは,線の一方に穂先を通し,もう一方に腹を通すという書き方のことです.これは古来から嫌われていたとされ,基本的に書の線としては悪い線と言う人もいます.

しかしながら,古典にはこの側筆を用いているものが意外と多いのです.例えば以下のように空海

高野切第二種

そして貫名菘翁

これらはどれも素晴らしい線で,線の表現という点では右に出るものは無いでしょう.

側筆を物理学的に解析すると,その摩擦係数は中鋒よりも大きくなり,書字時は筆の穂先に振動が生じている状態であると言えます.振動工学における自励振動モデルといえ,スティックスリップ現象に近いものとも言えます.側筆の現象をスティックスリップ現象に近似できるとしたら,物体の動く速さは重要な要素となり,これ如何で振動が変化するわけです.つまり側筆においては,筆の動かす速さというものが大いに支配的となります.スティックスリップ現象が発生するためには丁度良い速さで筆を動かす必要があるわけです.

書は物理ではないと言われそうですが,結局大抵の場合,筆をゆっくり動かすということが重要になります.それにより筆が浮くこと無く,沈着しながら複雑な味わいを持つ線を書くことができるのです.

最初に側筆を用いたのは勿論王羲之なわけで,書を造形の芸術から線の芸術に進化させたともいえるわけですが,それにこの側筆が大きく貢献しているというのは言うまでもないことでしょう.


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