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九成宮醴泉銘の臨書と用筆

初心者が最初に取り組む古典として、九成宮醴泉銘はかなりポピュラーなものですが、初心者のみならず、熟練者でもかなり難しいと感じることでしょう。なぜ難しいのかということを考えてみると、少しの字形の狂いも許されないということが、第一の理由として挙げられますが、熟練者は字形よりもその線質、用筆の難しさを感じることだと思います。どこまでもまっすぐで、特徴の無い線ですが、鉄の棒のような強さを持っています。この点が、同じ欧陽詢の他の作品と異なる点です。

ただ、用筆法というものは、書き方さえわかってしまえば、なんてことありません。と言いたいところですが、実際は用筆法を追究するということ自体が非常に難しいことで、またそれを習得できるかどうかというところも問題です。ここでは、私がおもう九成宮の用筆法を紹介します。

この九成宮の用筆法は、実は中学までで触れる日本習字的なものとは大きく異なります。その具体を以下に示します。

  1. 起筆で30〜45度に打ち込む
  2. 筆を小さく右回転させる
  3. 中鋒の状態で送筆する
  4. 終筆は、うまくいくと特に整える必要なく、45度で収める

ポイントは、2.の、筆を小さく右回転させるということです。これにより、通常蔵鋒でなければ実現しない中鋒が、比較的簡単に書けます。

もちろん、この書き方は一例であり、流派に因っては異なりますが、私は色々な書き方を試し、もしくは様々な文献を読んで、この用筆が恐らく正しいだろうという結論に至りました。

このような用筆法の究明は中々茨の道のりですが、一つの解が見えたときの喜びは非常に大きいものがあります。


(執筆担当: F. H.)

九成宮醴泉銘の臨書作品はこちら



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